022836 ランダム
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アムステルダムコーヒーショップ

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トッピ【後編】

私は、なんというか、トッピな男性によく出会う。で、恋に落ち、後でトンデモナイ目に遭う事が、普通によくある。あんまり続くものだから、「この男性はトッピだっ!」と思ったら、自分から身を引くように心がけている。
まったく私が今までにお付き合いした人と言ったら、トッピな男性が多かった。今を去ること十年前、ファーストキスの相手にしてからが、今にして思えば妄想癖があった。
「シクシク(泣)」
「パモ男(仮名)どうして泣いているの?」
「本名ちゃん聞いて、オレ来年の今頃生きてないかもしれない。完全自殺マニュアル読んだら、本当に死にたくなっちゃったんだ」
てな事を言われて君ならどうする。
「自殺マニュアル…」
私が読んだ感想からして、首吊りが一番確実でお手軽だよなぁ等と納得している場合ではない。恋人が死にたくなっていると言うのだから尋常じゃいられない。しかも、それが総て脅迫的な妄想なのだからもうこれは普通じゃいられない。
最初は「そういう人もいるのかな」と半信半疑だった私も、パモ男から語られる自殺伝説が加速度を増してトッピになっていくうちにバカバカしくなってきた。なんとパモ男君は男子高校生ながらに「オレの命を狙っている奴の気配を時々感じる」のだそうだが、そんなの妄想 なわけで。しかし突っ込めばパモ男はまるで何も聞こえないかのように黙る。私が怒る。パモ男が泣く。私がなだめる。パモ男が語る。「同級生の岸田がオレを陥れようと必死なんだぜ…」私はもう「無理」である。で、別れた。
これは勿論ヒドイ例なのだが、最近は、ノッケが只のボンクラだということがバレている為だろうか、トッピなビョーキ系の男性に滅多に出会わない。それはそれで哀しい今日この頃なのです。しかし「私はあなたと下着を交換したい」と言い出した男性がいた。しかも、白日中の茶店でだ。ニコニコと笑いながら言うのでたまげた。「ね、そーゆーこと一度してみたいの、どう?どう?」と、まさに人生はワンツーパンチである。
私は言葉を選びに選び、言った。
「正常と異常のラインは個人、国家、民族、時代によって刻一刻と変わるものであり不変ではない。それは性欲においても然り、だ。異性と下着を交換したいという想いを、願望を、異常と決め付けることは誰にも出来ない。しかし、しかし……いや~(泣)。私それはできませんっ。ごめんなさいっっ!」
今にして思えば謝る必要はないのだが、その時は机に突っ伏して頭を下げたものだ。だってコワかったんだもん。
さすがにその男性とは恋に落ちませんでしたな。
男性の中には、女性を今現在の不満足な自分を恋愛によって改良してくれる人生転換装置と思い込み、自分勝手な願望を口にした途端、手のひらを返したように冷たくあしらわれる。つまりは男性の正常な願望が、女性にはトッピだったわけで、恋人の面前で白日の下にさらされてしまったトッピは、裏側に個人の何かに飢えた姿が克明に描きこまれていて、いかんともしがたい。おかしかったり、愚かだったり、奇妙だったり、哀しかったり、切なかったり、する。
私が生まれて初めてトッピを男性にぶちまけたのは、十七歳の時だ。
あんまり恥ずかしいので誰にもこの事は秘密にしておいたのだけど、まー、時効でしょう。書いちゃおう。
続きは次回!


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